2025年度 日本基礎心理学会公開シンポジウム
基礎心理学が解き明かす「こころ」の不思議
令和7年度 日本学術振興会 科学研究費補助金(研究成果公開促進費)「研究成果公開発表(B)」補助事業
基礎心理学が解き明かす「こころ」の不思議
十人十色のこころに迫る

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SHINODA
日本基礎心理学会では、高校までの学習であまり触れることのない基礎心理学、つまり、人間の心(脳)の働きの基本的な仕組みを科学的に明らかにする学問分野の研究とその成果、そして何より基礎心理学の魅力について知っていただくことを目的として、隔年でシンポジウムを企画しています。
今回のシンポジウムでは、「十人十色のこころに迫る」と題して、人間の知覚や認知のしかたの多様さに関する研究をご紹介します。知覚とは、視覚や聴覚、触覚などの感覚を通じて外界の物事や自分の身体の状態を把握する心の働き、認知とは、さらに複雑な情報処理により物事を認識したり、記憶したり、問題解決をしたりする心の働きのことを指します。例えば、色を見る、文字を読む、のように「誰でも同じように行っている」と思われがちな知覚・認知処理にも、実は個人差があります。私たちにはどのような個人差があるのか、そして、私たちは個人差の存在をきちんと認識できているのか・・・皆さんと一緒に、人間の「こころ」の特徴や不思議について、楽しく、時に真剣に、考える機会になりましたら幸いです。
このシンポジウムは高校生の皆さんを主な対象としていますが、その内容は高校生のご家族、高校の先生方、そして広く心理学に関心を持つ大学生の皆さんや社会人の方々にも充分に興味を持っていただけるものであると自負しております。個性や多様性を大切にするためには、そもそも人間の「こころ」はどのように十人十色なのかを知ることが重要です。皆さん是非ご参加ください。
河原 純一郎(北海道大学、日本基礎心理学会 理事長)
- 【日時】
- 2025年10月19日(日) 13:00〜16:40(Zoom会場オープン12:30〜)
- 【場所】
- オンライン(Zoom)開催
- 【参加申し込み】
- 参加するためには前日(10月18日)までに事前登録が必要です(メールアドレスが必要です)。こちらのGoogleフォームからご登録ください。
- 【主催】
- 日本基礎心理学会
- 【司会】
- 浅野倫子(東京大学)
- 【プログラム】
- ※時間配分など,細部は今後変更になる可能性があります。
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- 《第一部》 講演(13:00〜16:00)
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浅野 倫子(東京大学)
「はじめに」13:00〜13:10
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栗木 一郎(埼玉大学)
「心の中の色,脳の中の色」
13:10〜14:00
あなたの見ている色と、隣の人が見ている色は、同じでしょうか?これは誰もが抱く素朴な疑問ですが、明確な答えは見つけられていません。同じ色名を使ったら、同じ色を感じているのでしょうか?「心」の中で感じている色は、脳の中の神経活動によって表現されているはずです。脳活動を測定したら、心の中の色が他者と同じか否か、答えを知ることはできるでしょうか?#TheDressという画像に対し、ある人は「白い生地と金の飾り」と、別の人は「青い生地に黒の飾り」と言い、同じ画像に対する色の解釈に大きな個人差がある事が示されました。さらに、#TheDressの色を同じ色名で答えた人々の間にも、詳細な色の感じ方に違いがあることが研究で報告されています。一方で、同じ色に対して生じる脳活動にも、共通する部分と顕著な個人差とが混在しています。本講演では、色知覚という基本的な感覚に関する根源的な「問い」について、脳活動との対応を調べた研究により解説します。
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浅野 倫子(東京大学)
「あなたにとって『あ』という字は何色?:共感覚から垣間見る認知の個人差」
14:10〜15:00
あなたにとって『あ』という文字は何色ですか?こう聞かれたとき、質問の意味が分からず戸惑う方もいれば、「物理的にはインクの通りの色だけれど、それとは別に自分の中では、『あ』という文字を見るといつも赤色(または青、黄など、他の色)の印象が自動的に浮かぶ」という方もいることでしょう。後者のような方は色字共感覚を持っていると考えられます。ある情報(例:文字)を受け取ったときに、一般的な情報処理(例:文字が読め、理解できる)だけでなく、追加の情報処理(例:色を感じる)も生じる現象を共感覚と言いますが、色字共感覚はその一種です。共感覚は一部の人だけに見られるものですが、このことは、文字を読むといった単純に思える認知処理にすら大きな個人差があることを示しています。このような個人差について知ることは、人間一般の知覚・認知処理のメカニズムを一層明らかにすることにもつながります。一緒にそのような研究の世界を覗いてみましょう。
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新美 亮輔(新潟大学)
「人間は『十人十色』を考えるのが苦手:個人差、性差、マイノリティ」
15:10〜16:00
人間は十人十色、性格も行動も人それぞれ。そんなこと、言われなくても知ってるよ!と思うかもしれません。でも「どれくらい」十人十色か、個人差は「どれくらい」あるのか、考えてみたことはありますか?
個人差があると言っても、似ている人もいますよね。自分と違う「○○な人」がいると聞いても、想像しにくいですし、自分には関係ないかなと思いそうです。実は、人間の十人十色っぷりをきちんと把握するのは、とても難しいことなのです。そこで、心の個人差の大きさを正確に把握するためにはどんな考え方が必要なのか、基礎心理学の観点から考えてみましょう。たとえば、男女の性格や行動がどれくらい違うのか(性差の大きさ)は、どう考えたらよいのでしょうか。マイノリティの割合や、身の周りにマイノリティがいる可能性は、どう考えたらよいのでしょうか。心の個人差を過大視も過小視もせず、きちんと把握するための基礎となる考え方をご紹介します。
- 《第二部》 基礎心理学なんでも相談室(16:10〜16:40)
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「このような現象は心理学で説明できる?」「心理学を学びたい場合はどうしたらいい?」「心理学を学んだ人の将来の進路は?」などなど,心理学に関して抱いている素朴な疑問,質問,相談があれば自由にお寄せください。第一部の講演の内容に関係していても,関係していなくても,どちらでも問題ありません。基礎心理学の研究者たちがお答えしたり,一緒に考えたりします。
【本シンポジウムに関するお問い合わせ先】
日本基礎心理学会 事務センター
E-mail:kisoshin-post-at-as.bunken.co.jp[-at-を@に変えてください]

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