シンポジウム1
シンポジウム1(一般公開)
「基礎心理学の現在と将来:脳研究・応用研究・技術研究の前線から見えてくる若手研究者のキャリアパス」
- 企画・司会:
- 川畑秀明(慶應義塾大学)
- 話題提供者:
- 四本裕子(慶應義塾大学)
- 和田有史(農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所)
- 原澤賢充(NHK放送技術研究所)
- 指定討論者:
- 藤崎和香(産業技術総合研究所)
- 企画趣旨:
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基礎心理学を専門分野としている若手研究者にとってのキャリアパスは近年多岐にわたっていますが、決して明るいものとは言えません。基礎心理学の分野だけを生涯の研究人生で全うできる研究者はごく限られたものとなっていると言っても過言ではなく、ましてや研究者として就職の場を確保することも難しい時代となっています。このような時代にあって基礎心理学のあり方にも変化が見られつつあります。近年では、脳科学や神経科学の分野と基礎心理学の研究分野の垣根が低くなり、工学系の研究分野でも心理物理学や感性評価等の手法が多く用いられてきています。かつて心理学のなかでも王道だった基礎心理学分野は、現在では神経科学や工学、情報学等の境界領域として、またインターフェイスとして新たなブレイクスルーを見いだしていく時代になってきたと言うことでしょう。
本シンポジウムでは、従来の意味での基礎心理学を研究の柱に据えながらも、脳研究や応用研究、技術研究の前線でご活躍の3名の研究者と1名の指定討論者を迎え、お話し頂きます。日本基礎心理学会が創設されて30年。話題提供者、指定討論者、司会者に至るまで、学会の歴史とともに人生を歩んできつつある30歳代の研究者です。大学院生やPDの若手研究者から見たら少し先輩、多くの学会会員の中ではまだまだ若手研究者として位置づけられる方々です。そのような、これからの基礎心理学を担う研究者から、ご自身の研究やキャリア形成とともに、基礎心理学の現在と将来についてお話頂きます。
- 要旨:
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慶應義塾大学の四本裕子先生には「視覚と脳研究における若手研究者キャリアパスの日米比較(仮題)」というタイトルで、日米の大学院教育や学位取得の過程、その後の就職など日米の若手研究者をとりまく環境を比較し紹介して頂きます。これから学位取得を目指す学生や学位取得後間もない研究員が今後のキャリアパスを築く際に直面するであろう問題について、ご自身の研究テーマである知覚と脳科学の研究変遷や動向をふまえ、お話頂く予定です。
(独) 農業・食品産業技術総合研究機構食品総合研究所の和田有史先生には「食の視知覚(仮題)」というタイトルで、ご自身が所属されている独立行政法人研究所ならではの応用研究のなかから、食品の色や鮮度、物性などの食品の特徴の視知覚に関する心理物理学的な研究について紹介頂くとともに、知覚心理学的知見の応用技術への展開を目指すことで生まれてくる新たな基礎心理学的なフォーカスを見出した事例についてもお話頂く予定です。
NHK放送技術研究所の原澤賢充先生には「企業研究所での基礎心理学のお仕事(仮題)」というタイトルで、心理学を学んだ大学院生の進路が近年多岐にわたるなか、企業の研究所が抱える大学等の研究機関とは異なる目的意識の下で研究・開発についてご自身のご研究を交えお話頂きます。技術開発現場でのPDCAサイクルに基礎心理学がどうかかわっているかなど、企業研究所での基礎心理学者の研究のありようについて具体例を交えてお話頂く予定です。