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特別フォーラム2:「行動の数量化とモデル化の現在」
日時:11月8日(日)15:15〜17:15
形式:Zoomを用いたウェビナー
概要:研究対象の測定精度や測定範囲を向上させつつその数理モデルを構築することは、科学的発展における健全な姿である。本フォーラムでは、「行動の数量化とモデル化の現在」と題し、これに関わる3つの講演を実施する。まず、前者の数量化に関して、社会オペラント行動の自動計測の技術と、それを通して得られた大量で精密なデータに着目した研究を紹介する。続いて後者に関して、古典的な行動現象に対する現代的なモデリングの手法と、臨床心理学分野におけるモデリングの現状について紹介する。これらの講演では、自らの研究を通して得られた行動データが扱われている部分も多く、理論的分析のみに終始するものではない点が特徴となっている。

企画 丹野 貴行(明星大学)・坂上 貴之(慶應義塾大学)

司会 丹野 貴行(明星大学)

講演1
「コンピュータビジョンを用いた社会オペラント行動の測定に向けてのこれまでの歩み」
黒田 敏数(愛知文教大学)

講演2
「動物の反応のバウト/休止パターンに関するベイズ統計モデリングを用いた時系列解析」
松井 大(Ruhr University)

講演3
「恐怖の再発と潜在原因モデル」
国里 愛彦(専修大学)

指定討論 坂上 貴之(慶應義塾大学)、澤 幸祐(専修大学)

■ 講演要旨 ■ 

講演1:「コンピュータビジョンを用いた社会オペラント行動の測定に向けてのこれまでの歩み」
黒田 敏数(愛知文教大学)

要旨:オペラント研究の主目的は、行動の予測と制御である。そのため実験研究では一部のケースを除き、個体を隔離して行動の分析を行う手法が慣例となっている。この手法は分析に必要な変数の統制や操作を容易にするメリットがある一方で、隔離された状態の行動しか対象にできないデメリットもある。ヒトを含む多くの動物にとって行動の大部分は他個体が関わる社会的なものであり、それをうまく取り扱えないことはオペラント研究の弱点と言わざるを得ない。この弱点を乗り越えるため、発表者は近年コンピュータビジョン技術の導入に取り組んでいる。一般的にコンピュータビジョンは、物体の検出や分類が主な使用目的であり、行動測定は想定されていない。リアルタイム性を求めると、検出・分類の精度が落ちる欠点もある。また社会行動の計測で起こる個体同士の「重なり」も大きな課題となる。これらの課題に取り組んできた発表者のこれまでの歩みを紹介する。


講演2:「動物の反応のバウト/休止パターンに関するベイズ統計モデリングを用いた時系列解析」
松井 大(Ruhr University)

要旨:動物がオペラント行動に従事するとき、その反応は時間的に均一に生起するわけではなくある程度まとまって群発される。この経験的事実は「反応バウト」と呼ばれ、動物の反応はバウト内反応、及びバウト間の休止の 2 つの状態の遷移過程として考えられる。しかし、従来のバウト分析は実験セッション全体の反応間間隔の分布から状態を分類するものが多く、両状態の時間的推移を直接記述した試みは少ない。そこで講演者の研究では、時系列モデルの一種である状態空間モデルを用いて、VI、及びVRスケジュールにおける反応強度、及び休止状態への滞在確率の動的な変動を推定することを試みた。このようなモデリングを通じた研究の方法論的な意義、並びに陥穽を議論することを通じて、今後の研究の指針に寄与する場になれば幸いに思う。


講演3:「恐怖の再発と潜在原因モデル」
国里 愛彦(専修大学)

要旨:臨床心理学・精神医学では、精神疾患もしくは精神的問題のモデル構築が行われてきた。2010年代からは、そのモデル構築において、計算論的アプローチが用いられるようになってきており、計算論的精神医学という研究領域としてまとまってきている。本発表では、まず計算論的精神医学と代表的な生成モデルについて解説する。次に、計算論的精神医学研究の1例として、恐怖条件づけの再発に関して、潜在原因モデルについて論じる。


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