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【日本基礎心理学会2010年度第1回フォーラム】

「認知神経科学のひろがり」

たいへん多くの方々のご来場をいただき,活発な討議がなされました。ご参加くださった皆様に厚く御礼申し上げます。
【日時】
2010年 5月 22日(土)14:00〜17:00
 
【場所】
東京大学 本郷キャンパス 法文2号館 2階 文学部1番大教室
(東京メトロ丸ノ内線 本郷三丁目駅,東京メトロ南北線 東大前駅)
 
【企画・司会】
村上郁也 (東京大学大学院総合文化研究科)
 近年の基礎心理学研究において,心理学と脳科学の融合はすさまじい速さで進みつつある。これらの分野を融合してこころと脳を理解していこうという旗印のもとに,「認知神経科学」という学問分野が確立して着実な成果をあげてきている。認知神経科学は,狭義には認知活動中の脳活動計測などの大脳生理学的アプローチを指すこともあるが,より広い考え方では,脳科学の知見やターミノロジーを積極的にとりいれながら心的機能や処理過程を記述・解明していくアプローチ一般を指す。その意味では,例えば前世紀にゲシュタルト心理学者の一人,W.ケーラーが大きな目標として掲げながら脳研究の技術的基盤が整備されるまで実現できないでいたアプローチが,前世紀終盤から21世紀の現在になって初めて開花して多分野に広がったという見方をすることもでき,実験心理学の歴史の延長線上に必然的に置かれた今日の学問分野であるといえる。この企画においては,認知神経科学の概観をひとわたり俯瞰したのち,様々な研究分野で活躍されている研究者から話題を提供していただき,この分野の魅力と将来性を改めてアピールする機会としたい。
 
【講演】
小泉政利 (東北大学大学院文学研究科)
「幼稚園での英語活動が母語の意味処理の発達に与える影響」
 早期英語教育への関心の高まりに伴い,何らかの英語活動を取り入れる幼稚園が増えている。しかし,就学前の英語接触が子どもの心身の発達にどのような影響を与えるかに関してはほとんど分かっていない。本発表では,幼稚園における英語接触量の違いが母語(日本語)の発達,特に文の意味処理過程の発達にどのような影響を与えるかを,脳波(事象関連電位)を手がかりに考察する。ただし,本発表の目的はあくまで実験データとその解釈を紹介することであり,幼稚園での英語活動や早期教育の是非について論じるものではないことを予めお断りしておく。

河原純一郎 (産業技術総合研究所)
「注意の瞬き: 資源剥奪モデル vs. 選択モデル」
 負荷のかかった事態での物体認識成績を説明するために,注意をある種の資源として例えることはよくある。二重課題の一種である注意の瞬き現象は,短時間に2つの標的を呈示するとき2つめの標的が見落とされやすいことを指すが,多くの研究者はこの見落としは,第1標的が注意資源の大半を奪い,第2標的へ割くことのできる資源が欠乏するために起こると考えている。一方,注意の瞬きの本質は資源剥奪ではなく,数ある候補の中から第1標的を選択するプロセスにあると考える立場もあり,両者は激しい論争を続けてきた。本講演では,これらのモデルを対比しながら最近の論争を解説するとともに,選択モデルを支持する新しい知見について述べる。

松元健二 (玉川大学脳科学研究所)
「目標達成装置としての脳」
 ある時点では最適であった行為も,次の瞬間にはもはや不適切となり得る。このように時々刻々と変化する環境の中で目標を達成するために最適な行為の選択や,その調整には,前頭前野内側部が重要な役割を果たしていることが分かってきた。また,生理的な一次報酬やその下位目標としての二次報酬という“外的報酬”ばかりでなく,個人的な娯楽としての楽しみのような“内的報酬”の獲得も,私たちは日々の目標として掲げる。外的報酬と内的報酬は,線条体前部において,相互作用しながら統合されていること,そしてそれが前頭前野における行動制御機能にも影響を与えていることが分かってきた。このような,目標を掲げてそれを達成する脳の仕組みについて,演者自身の研究を中心に紹介する。

佐藤弥 (京都大学霊長類研究所)
「表情を処理する心理神経メカニズムの時空間構造」
 表情はヒトの対人相互作用において重要な役割を果たしている。しかし,表情を処理する心と脳のメカニズム,特にその時間情報は明らかでない。本発表では,この問題を検討した我々の深部脳波・fMRI・MEG研究を紹介する。

 
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