日本基礎心理学会とは お問い合わせ サイトマップ HOME
学会について
お知らせ
イベントのご案内
大会
フォーラム
公開シンポジウム
共催・協賛の研究会
入会案内
学会誌
優秀発表賞
優秀論文賞
研究活動助成制度
リンク
イベントのご案内
過去のフォーラム
2002年度 第1回フォーラム
【現場に立つ基礎心理学 ―企画の趣旨―】
 基礎的な研究と応用的な研究といった時、すぐに思い浮かべることができるのは、大学や基礎研究所の研究と、実際の問題をテーマとした研究所や教育・矯正施設などの研究との対比である。ではそこでなされている研究の特徴は?と問われたならば、環境的な統制がよく整った理想的な条件で自在に実験パラメータを設定しつつ研究が遂行できる前者と、現実場面において撹乱要因をたやすく制御することが難しい条件の下で結果を出ていかねばならない後者の姿を、その答えとして思い浮かべるかもしれない。もしもこのような特徴を認めるならば、心理学研究の現在は、先にあげた、ある特定の研究機関と基礎・応用の区別とが対応するような時代ではないことに私達は気づく。つまり大学で「応用」的研究を、教育施設で「基礎」的研究をすることも十分ありえる時代なのである。 今回お話いただく方々は、現在、大学や研究施設で日本基礎心理学会の会員として活躍されながら、同時にその関心を現実場面に向け、困難な課題の解決に力を注がれている「現場」の基礎心理学者でもある。その現場での研究者の視点が、新たな刺激となって会員各位の研究の活性化につながることを願っている。
【視覚障害と基礎心理学】小田浩一(東京女子大学)
 視覚障害のある日本人の発達支援、教育、リハビリテーションという日常的なサービスをする場面に近いところで研究を初めて20年近くなる。その間、教育やリハビリのために必要な研究がありながら、あまり追求されていないこと、それも基礎データそのものがないことが多いことを痛感してきた。一方現場に持ち込まれる研究は、健常者の大学生で知られたことを再確認する応用研究、ないし、異なり方をみる異常心理の域を出ないことも少なくない。これでは、実際の問題は片付かないし、学問の発展もなければ、サービスの向上もない。僕の場合は視覚の感覚知覚的問題が人間の生活に及ぼす影響とそれを解決するための基礎心理学である。ここでは、そういう文脈で行ってきた研究のいくつかを紹介してみたい。ミネソタ大学のロービジョン研究室と共同で開発した読書検査チャートとそれによって分かってきた知見、触覚に適したカタカナ書体の開発などである。
【「応用」の発想から:すみ分けと協力】尾入正哲(京都府立大学)
 基礎と応用はどこがどう違っているのだろうか。どちらも同じ「研究」であり、共通した所も多いことも確かである。しかし、両者には扱う問題が異なるという以上に、多くの相違点がある。実験と現場調査といった方法論的な違いもありうるし、研究費の出所・研究者の立場や地位・評価されるポイントなど、具体的に考えてみると両者を分ける観点にはさまざまなものがある。それらが心理学における基礎研究と応用研究の相容れがたい発想の違いにつながっていると思われる。 演者は注意や記憶の認知心理学的研究を出発点とし、その後民間研究機関で産業現場のヒューマンエラー防止や労働環境の快適性に関する課題にとりくんできた。基礎と応用の両方の世界の体験を紹介して、両者は安易に協調すべきではなく、適度な対立(緊張?)関係も必要であることを指摘したい。
【電子通信技術と心理学】望月 要(メディア教育開発センター)
 電子通信技術の発達により,電子機器を介した人間同士のコミュニケーションや,機械と人間の複雑なコミュニケーションが身近なものになった.こうした技術の進歩は急速で,システムの性能向上には目覚しいものがある.その結果,システムの微細な性能の差や,工学的システムを介さない自然なコミュニケーションとの微妙な違いを,ユーザである人間を通して検出し評価できるような手法が求められるようになった.私の属するチームでは「基礎」心理学的な手法を用いて,この問題に取り組んで来た.今回は,観察者の重心位置の変化を利用した大型サラウンド型ディスプレイの視覚効果の測定,潜在学習と言語条件づけを利用した遠隔会議システムの伝送遅延の効果の測定などの試みを中心に,その試行錯誤の過程を紹介する.
戻る
All rights reserved by the Japanese Psyconomic Society