若手会について

基礎心若手会は、日本基礎心理学会に所属する若手の研究・教育活動や交流の支援を目的に2013年12月に設立された組織です。現在42歳以下の有志学会員10名で構成されています。

若手会の活動理念は、「若手の研究・教育を促進する活動に取り組み、基礎心理学分野全体の競争力の向上に貢献」することで、柔らかい言葉で言えば「若手の得になるようなことをやろう」ということになります。

2017年度のメンバーは有賀敦紀(広島大)、市川寛子(東京理科大)、牛谷智一(千葉大)、小川洋和(関西学院大)、三枝千尋(花王)、白井述*(新潟大)、田谷修一郎**(慶應義塾大)、日高聡太(立教大)、山田祐樹*(九州大)、四本裕子(東京大)です。また、若手会担当理事である石金浩史(専修大)の手厚いサポートを受けています。[**委員長、*副委員長]

活動報告

毎年開催される基礎心理学会の大会におけるサテライトオーラルセッションの運営・開催に加え,若手の進路指導調査や基礎心理学研究室を結ぶポータルサイトの開発・運営を行っております。詳しくは本ホームページおよび基礎心理学研究誌に掲載されました以下の活動報告に関する紹介記事をご参照ください。   

和田有史. (2015). 「若手研究者特別委員会」 の発足とその活動—第 33 回大会サテライトオーラルセッションを中心に—. 「基礎心理学研究, 34(1), 173-175.

  

四本裕子. (2015). 若手研究者特別委員会による博士号取得者進路調査. 「基礎心理学研究, 34(1), 176-179.

  

和田有史. (2016). 2015 年度の 「若手研究者特別委員会」 の活動. 「基礎心理学研究, 34(2), 286-289.

サテライトセッション

日本基礎心理学会に所属する若手に口頭発表を行う機会を与えると同時に、同世代の優れた研究に接する機会を設けることを目的として、2014年から基礎心理学会大会の前日にサテライトセッションを行っています。そこで、学位未取得者および学位取得後10年以内の本学会会員を対象に、すでに査読付き学術論文として刊行されている研究とその後の発展についての発表を募集し、若手会のメンバーで審査し、評価の高かった8件をファイナリストとして採択しています。これまでのファイナリストは、修士課程の大学院生から博士研究員、准教授までバラエティに富んでいます。各発表の持ち時間を30分と長めに設定していることが本セッションの特徴で、充実した発表と質疑応答がなされています。聴講者には各発表についてフィードバック用紙の記入を依頼し、発表者にフロアの評価を伝えられるように工夫しています。さらに各聴講者の投票により、もっとも優れた発表を1件のみを選定し「The Young Psychonomic Scientist of the Year」として表彰します。

 

詳しくは特設サイトを御覧ください。

サテライトセッション 歴代ファイナリスト

2016年:

The Young Psychonomic Scientist of the Year

林大輔(東京大学)
「知覚される方位を持たない刺激によるコントラスト検出の促進」

この度はThe Young Psychonomic Scientist of the Year 2016に選んでいただき、ありがとうございました。今回発表させていただいた研究は、学部3年生の時に実験を始めてから、博士3年生になるまで実験を積み重ね、ようやく論文化された思い入れの強い研究です。今回でこの研究について対外発表するのも最後であろうと思っていたタイミングで、このような素晴らしい賞をいただけて、本当に嬉しいです。

私は知覚、特に視覚を専門に研究を行っています。学部3年生の時、漠然と「意識みたいなものに興味があります」と言った私に、「縦縞と横縞を足し合わせると同心円になる」という図形を、指導教員であった村上先生が教えてくださいました。その図形の面白さに心惹かれるとともに、意識のようなよく分からないものを知りたいと思った時に、視覚刺激を用いたアプローチができるのだと驚いた覚えがあります。それからは、主に心理物理学的手法を用いて実験を行っています。物理的な刺激と意識的な知覚の関係を記述することで、その間に存在している目には見えない処理にアプローチでき、潜在的にどのような表象が存在しているのかを明らかにできることに魅力を感じています。「ある人がどのような世界を見ているのか」を知ることは、「ヒトの心」なるよく分からないものを知る1つのやり方だと思いますし、「その背後にはどのような処理が存在しているのか」を知るためには、心理物理学的な手法がとても有用なアプローチになりうると考えています。

学部生の実験演習のTAをしていると、知覚についての実験は、どちらかと言えば難しいし面白くない、と考えている学生が多いように感じます。自分の行っている研究も、マニアックだと言われてしまいがちではあります。ですが、日常当たり前に感じている知覚システムに潜む面白さ、心理物理学的手法の美しさなど、知覚心理学には楽しさが溢れています。今回、基礎心理学会の皆様から、普段自分が面白いと思って行っている研究に対して、分かりやすかった、面白かったと言っていただけたことが、自信にもなりましたし、大きな励みになりました。

僕は人間が好きで、面白いと思って、日々研究をしています。これからも、自分が面白いと思える研究をしていきたいですし、それを他の方々と共有して、一緒に面白がれたら本当に幸せだなと感じます。またいつか、サテライトオーラルセッションで新しい研究の発表をして、皆様と面白がりたいです。

ファイナリスト

中村哲之「ニワトリにおけるエビングハウス逆錯視」
若生遼「Characteristics of haptic peripersonal spatial representation of object relations」
三好清文「非注意は既知感を生じさせる」
村井祐基「Optimal encoding of event duration: Modality-dependence of the central tendency」
小林恵「若年成人顔への知覚狭小化の通文化性とその神経基盤」
佐藤佑介「体操選手におけるとび1回ひねり遂行中の視線移動パターン」
Qi Li「Dynamic control of information in visual working memory maintenance」

2015年:

The Young Psychonomic Scientist of the Year

寺尾将彦(山口大学)
「追跡眼球運動による眼球運動と反対方向の運動への強調効果」

この度はThe Young Psychonomic Scientist of the Year 2015 に選んでいただきありがとうございます。私は視覚の研究者でして、脳内の不安定な視覚信号がどのような計算過程を経て普段の視覚体験や視覚情報を利用した行動制御に利用されているのかについて、システム全体の機能レベルで理解することを基本的な研究テーマとしています。理想としては、ただの現象記述的なレベルにとどまらず、メカニズムの理解まで踏み込める堅牢で説得力のある証拠をソリッドでスマートな心理物理実験で集めていきたいと考えています。また、そこで得られた知見を神経機構と関連付けることができればすっきり気持ちいいと感じますし、既知の神経機構ではまだ説明がつかなければ、よりエキサイティングだなあと感じます。

本サテライトセッションでは基礎心理学領域の広い背景の方々から、発表に対する方法的な問題から成果に関する感想まで、忌憚のない様々なコメントを口頭や書面でいただけました。これは賞をいただけたことよりも貴重な財産です。ただ、残念なことに、近年の基礎心理学界隈では高次機能の研究に多くの人の興味が移り、基礎的な感覚や知覚をやっている若い同世代の人が少なくなっているように感じます。実際、私が基礎心の年次大会で発表しても隣近のポスターのように人が集まることは少ないですし(これは私の力不足によるところが大きいのでしょうが)、また、現在のところ基礎心には多くの人に同時に宣伝できる口頭発表の機会はありません。勿論、より新しいテーマに積極的に挑戦することこそ若手の健全的な態度なのですが、一見やり尽くされたと思われる領域でも、古くから存在するにもかかわらず説明されていない問題はそこらじゅうに転がっていますし、それらは今だからこそ解ける問題なのかもしれません。実際、今でも感覚知覚領域でhigh-profileな研究はしばしば報告されます。何よりも、自分が面白いと思っていることが国内の同世代の方と共有できないのはそれなりに寂しいことでして、今回賞をいただけたことで、自分が面白がっていることを基礎心の方々と多少なりとも共有することができたのかなと少し励みになりました。応募要項を読み返しますともうしばらくは再度応募することが可能なようですので、今後もまた参加させていただけたらと思います。

ファイナリスト

久方瑠美「位置知覚に影響をあたえる運動情報」
横山武昌「直視の無意識知覚処理」
峯知里「Value-driven attentional capture - 生起要因の検討 -」
大塚由美子「視線知覚の2重経路モデルの検証:眼球の偏位と顔向き手がかり統合の線形性」
中島亮一「放射線科医の病変検出特性 –読影専門家はあらゆる病変を同等に検出できるのか?−」
伊村知子「チンパンジーにおける大きさの平均の知覚」
佐々木恭志郎「感情の後付け:運動動作は画像の感情評価を遡及的に変容させる」

2014年:

The Young Psychonomic Scientist of the Year

浅野倫子(立教大学)「色字共感覚の文字習得過程仮説」

私にとってこの賞は格別なものです。その理由はいくつもあります。まず、静かな熱気にあふれる会場のその場で、聴衆の方々から直接研究を評価して頂いた、ということです。セッション中は聴衆全員に評価用紙が配られます。そして皆、少しでも発表者の若手のためになるようにと、良い点も悪い点も率直に評価し、様々な視点からコメントを書き込みます。そのような中での発表はかなりの緊張感に満ちたものでしたが、そのぶん高い評価を頂けた喜びもひとしおでした。聴衆の方々から頂いた手書きコメントの束の重みは忘れられません。また、出場者が本気で勝負する場で受賞できたことを誇りに思っています。実はかなり軽い気持ちで参加を申し込んだため、その後ようやく事の「本気度」の高さに気づいたとき、思わず背筋が伸びたのを覚えています(このセッションが一部で「基礎心理学者の天下一武道会」と呼ばれているらしきことを知ったのは、さらにその1年以上後のことでした)。出場者皆が「自分の研究が一番面白い」という自負を持ち(そして本当にどの研究も面白く)、負けたときは本気で悔しがる、でも互いの健闘はしっかり讃える、そんな青春漫画のような清々しい場です。

私がこの賞を頂いたのは、任期つきの現職に就いて1年目のことでした。現職では周囲の方々にも仕事環境にも大変恵まれていて、当時は(今もそうなのですが)所属先への愛着を深める一方で、任期つきであり、長くはいられないことの悲しさも感じ始めていました。その中でこの若手に対する賞には、「ごちゃごちゃ考えていないで自分の研究を続けよう。そうすれば誰かが評価してくれるから。」と背中を押してもらったような気がします。同僚の先生方は私の受賞をとても喜んでくださり、後日所属先内でも研究発表の場を設けてくださるなど、おかげさまでさらに背中を押してもらえる出来事も続きました。若手の職というのは任期つきが多いのが現状で、私以外にも、精神的にも他の面でも不安定な日々を過ごしている人は多いことと思います。でもこうやって若手を応援してくださる方々もたくさんいる、と勇気付けられるありがたい機会でした。賞を頂いたことに心から感謝申し上げます。応援して頂いた分、The Young Psychonomic Scientist of the Year 2014 という称号には責任もあると感じています。これから先、「あのとき彼女を応援した甲斐があったよね」、「今後活躍する、イキのいい基礎心理学の若手を見たいなら、あのオーラルセッションに行くのが一番!」と言って頂けるよう、今後もこつこつ努力いたします。

ファイナリスト

温 文「なぜ私は写真写りが悪いのか?自己顔の再認バイアス」
井手正和「触覚誘導性視覚マスキング」
大塚由美子「正立・倒立顔における視線知覚の恒常性」
吉本早苗「環境座標系における運動知覚」
Hsin-Ni Ho「色と温度の相互作用:赤い物体よりも青い物体に触れたときのほうが温かく感じやすい」
竹島康博「Hemispheric Asymmetry in the Auditory Facilitation Effect in Dual-Stream Rapid Serial Visual Presentation Tasks」
中島亮一「横目観察では視覚処理が妨害される」

PsyPo

基礎心理学を学ぶ学生や研究者、教員に、国内のどこで誰がどのような研究をおこなっているか一望できる検索の入り口となることを目的に、基礎心ポータルサイト「PsyPo」を作成しました。昨今は基礎心理学者も連絡先や履歴・業績一覧を載せたウェブサイトを持つことが当たり前になっていますが、それら個々人の運営するサイトは、アクセスするにも情報を比較検討するにも何分効率が悪い。そうしたサイトを集約して、知りたい情報に効率よくアクセスできるというのがPsyPoの最大の利点です。

 

大学院の進学先を検討したり、研究員としての勤務先をさがしたり、特定のテーマで共同研究のパートナーや講演者をさがすなど、さまざまな用途に活用していただきたいと考えています。


登録方法

 

PsyPoは登録サイトを随時メイルで受け付けています。利用資格は現在のところ,研究室の主宰者で,科研費等の競争的資金の申請資格を持つ方に限らせていただいています。PsyPoの運営母体は基礎心理学会ですが,上記の条件に合えば基礎心理学会に所属していなくても登録可能です。幅広い分野の方に利用していただきたいと思います。

 

PsyPoへの登録は,トップページから登録フォーム(Form.xls)をダウンロードし(ここからもダウンロードできます),そこに必要事項を記入してメイルで yuko@fechner.c.u-tokyo.ac.jp まで添付送信していただくだけで完了です。80字以内で紹介文を書く必要はありますが,手間はその程度です。通常1〜2日以内にはPsyPoから研究室へのリンクが貼られると思います。ただし登録は今のところ手動で行っていますので,うっかり見逃してしまうこともあるかもしれません(実際,最近1件そういうことがありました)。1週間経ってもリンクが貼られない場合はお問い合わせいただいたほうが良いかもしれません。