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2001年度 第1回フォーラム
【日時】
2001年4月28日(土)14:00〜17:00
【会場】
東京大学駒場キャンパス12号館1225教室
交通機関: 京王井の頭線 駒場東大前駅 下車 歩1分
【企画の趣旨】
 とにかく最近.記憶がおかしい.特に,人名がいけないようだ.顔を思い出し所属や住所,最近どこで出会って,何を食べたか,ときには電話番号まで思い出せるのに名前が出てこない.老人ボケと言われる年齢にはまだ間があると思っているのは本人だけなのかもしれない.そういう体験は,若い頃だってしていたような気もするのだが,どうなのだろう.などと,感じて,こんなフォーラムを企画したわけではないのだが,人間の情報処理にとって記憶は,非常に重要な要素である.と同時に,わかりやすいトピックとして,授業などでもなかなか人気のあるテーマでもあるようだ.今回のフォーラムでは,人間の記憶の実際的,実験的な側面に関して高橋先生に,動物の記憶について実森先生に,さらに記憶の理論的な側面,モデルに関しては都築先生にと,それぞれの分野の最先端を担っている研究音の方々に講演をお願いすることができた.企画者の疑問は解けるのだろうか.
【(1)フォールス・メモリ研究の最前線】高橋雅延(聖心女子大学)
 幼少期の性的虐待の記憶の真実性をめぐり、欧米において社会問題となった『回復された記憶・偽りの記憶』論争(recovered and false memory debates)は、従来の記憶心理学のアプローチに、劇的な転換をもたらした。なかでも、学習していない記憶が誤って想起されるフォールス・メモリが生起するメカニズムの解明に記憶研究の重点が移り、DRM(Deese-Roediger-McDermott)パラダイムに基づいた研究が多く行われている。このパラダイムでは、実験では呈示しないクリティカル語(たとえば「sleep」)のフォールス・メモリを誘導するために、このクリティカル語と強い連合関係にある連想語(この例の場合、「bed」「rest」「awake」「tired」「dream」など)を学習させ、クリティカル語のフォールス・メモリについて検討されるである。今回の講演では、主として、DRMパラダイムに基づいた従来の研究を整理した上で、新たな観点から行った2つの研究(情動語のフォールス・メモリ実験、二人で想起する協同想起のフォールス・メモリ実験)を紹介し、今後のフォールス・メモリ研究の展望を明確にする。

<プロフィール>

1958年 新潟県生まれ
1986年 京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得満期退学
1987年 京都大学教育学部助手
1990年 京都橘女子大学講師を経て、助教授
1994年 聖心女子大学助教授(現在に至る)
研究内容:

人間の記憶のメカニズムについて、さまざまな記憶方略の効果、感情の影響、社会的側面との関わり、自己との関係、などの実験を行っている。同時に、マスメディアにおいて、記憶の面白さ、不思議さ、恐ろしさについて積極的に発言するように努めている。
主な著書:
「記憶における符号化方略の研究」(北大路書房,1997年)
「視覚シンポルによるコミュニケーション:日本版PlC」(ブレーン出版,1995年)
「悲嘆の心理」(サイエンス社,1997年)
「現代の認知研究−21世紀へ向けて−」(陪風館,1999年)
「感性のことばを研究する−擬音語・擬態語に読む心のありか」(新曜社,1999年)
「記憶研究の最前線」(北大路書房、2000年)

【(2)動物における概念学習をめぐる記憶の諸問題】実森正子(千葉大学)
 動物における記憶過程についての行動的な研究は、主にハトと霊長類でさかんに行われてきた。特に1970年代からはいわゆる作業記憶についての研究数の著しい増加が見られ、符号化、リハーサル、検索、干渉効果などの動物の記憶の諸特性が明らかにされた。今日では視覚的イメージの記憶、プライミングのような潜在的記憶、またメタ記憶についても、動物を用いた研究が行われるようになっている。しかし動物の記憶過程そのものについての研究は、最盛期と比して近年は少なくなってきた。動物の様々な認知的行動への関心の高まりに伴い、むしろ空間認知、系列パターン学習、概念学習などとの関係の上で記憶の諸問題が談論されることが多くなってきた。これらはいずれも、複数の刺激情報の再構成化や結合関係についての情報処理が要求される課題場面で動物が示す認知的行動である。その中でも特に、動物における概念学習に焦点を当てながら、記憶の諸問題について論じてみたい。

<プロフィール>

1949年 東京都生まれ
1977年 慶應義塾大学大学院博士課程修了
1979年 広島大学総合科学部助手
1981年 文学博士
1981年 千葉大学文学部(心理学講座)講師
1984年 同助教授
1993年 千葉大学文学部(認知情報科学講座)教授
研究内容:
比較認知、学習、行動分析
参考著書:
実森正子・中島定彦学習の心理−行動のメカニズムを探る.サイエンス社、20OO.
Delius, J. D., Jitsumori, M., & Siemann, M. Stimulus equivalencies through discrimination reversals. In C. Heyes and L. Huber (Eds.), The Evolution of Cognition (pp. 103-122). The MIT Press Cambridge, 2000.
Jitsumori, M., & Delius. J. D. Object recognition and object categorization in animals. in T. Matsuzawa (Ed.). Primate Origin of Human Cognition and Behavior, Springer-Verlag 2001.

【(3)記憶に関するコネクショニストモデルの動向】都築誉史(立教大学)
 コネクショニストモデルは、脳の神経細胞に対応した単純な処理ユニットのネットワークを用いて、人間の認知のしくみを理解しようとするアプローチである。このモデルは、並列分散処理モデル(parallel distributed processing [PDP] model)とほぼ同義であり、理工学系ではニューラルネットワークモデルと呼ばれることが多い。今回のフォーラムでは、学際的な研究が盛んになった1980年代からの流れをふまえて、主に1990年代以降の新しい研究を紹介する。コネクショニストモデルにおいて知識は、結合重みの集合として表現され、新たな知識の獲得は、局所的な学習規則に基づいた結合重みの調節によって実現される。学習規則と非線形の活性化関数に基づく局所的な相互作用によって、複雑な創発的特性が大域的に現れる点が、コネクショニストモデルの重要な特徴である。記憶のコネクショニストモデルは早い段階から研究が行われ、他の高次認知過程にかかわるモデルの基礎を構成している。具体的なトピックスとしては、連想記憶、意味記憶、意味的プライミング効果、作業記憶、潜在記憶などに関するモデルを紹介し、カタストロフィック干渉という問題とその対処について説明する。単語認知や文理解といった言語に関するモデルも、記憶の問題と密接に関連しているため、簡単に言及する予定である。

<プロフィール>

1959年 愛知県生まれ
1986年 カリフォルニア大学ロサンジェルス校大学院交換留学生
1987年 名古屋大学大学院教育学研究科博士課程単位取得退学
1988年 名古屋大学教育学部助手
1989年 立教大学社会学部講師
1991年 立教大学社会学部助教授
1994年 博士(教育心理学:名古屋大学)
1996年 カリフォルニア大学サンタクルーズ校心理学部客員研究員(-1997)
1998年 立教大学社会学部教授
研究内容:
記憶と言語に関する実験的検討とモデル構成(コンピュータ・シミュレーション),メディア・コミュニケーションに対する心理学的アプローチ
参書文献:
都築誉史1997言語処理における記憶表象の潜性化・抑制過程に関する研究.風間書房
都築誉史, Alan, H. Kawamoto,行広隆次 1999 語彙的多義性の処理に関する並列分散処理モデル−文脈と共に提示された多義語の認知に関する実験テータの理論的統合− 認知科学,6,91-104.
都築誉史・伊東裕司(印刷中)ネットワーク理論 中島義明(編)現代心理学理論事典 朝倉書房
都築誉史・河原哲雄・楠見孝(印刷中)高次認知過程に関するコネクショニストモデルの動向 心理学研究
守一雄・都築誉史・楠見孝(編著)(印刷中)コネクショニスト・モデルと心理学 北大路書房

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