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1999年度 第2回フォーラム
【企画の趣旨】
 心理生理学(あるいは生理心理学)的指標は,科学としての心理学が生まれて以来,心の働きを探るための大切な指標の一つであった。Rugg & Coles (1995) の好テキスト"Electrophysiology of mind."(Oxford University Press) を見ると,そのような指標の一つである事象関連電位 (ERP) を用いた研究が,“注意”,“心的計時”,“記憶”,“言語”の各テーマ別にまとめられている。これらはまさに,基礎心理学がカバーする研究領域の一部である。にもかかわらず,今までの『基礎心理学研究』や学会発表においては,ヒトを対象とする心理生理学的研究が,著しく少なかったように感じられる。

 1997年度の第2回フォーラム『認知脳科学からみた心』では,fMRI や MEGによるニューロイメージングの技法が取り上げられた。これらが脳の高次機能へアプローチするための強力な手段であることは間違いない。その一方で,従来から用いられてきた脳波や事象関連電位は,“脳と心”の問題を解するために,われわれに何を提供してくれるであろうか。本フォーラムでは,企画者以外に,事象関連電位を指標とした研究を積極的に展開されている2名の研究者に講演をお願いし,現段階での研究ツールとしての事象関連電位の可能性について考えてみたい。

【事象関連電位と視覚探索研究】 宮谷真人(広島大学教育学部)
 視覚探索は,視覚的情報選択のプロセスを支える心理的過程について検討するための課題である。視覚探索課題を遂行中に事象関連電位を記録すると,注意やワーキングメモリの働きを反映すると思われるいくつかの成分を同定することができる。ツールとしての事象関連電位としての特長として,その時間分解能の高さと,異なる処理過程を反映する複数の成分を同時に記録可能なことを挙げることができる。時間的分解能の高さを生かした研究例として,N2成分を指標として視野内の複数対象の探索の継時性・並列性を検討した Woodman & Luck(1999) の研究を紹介する。さらに,処理陰性電位の一種である探索陰性電位を,二重課題法を用いて複数の下位成分に分離し,それらをワーキングメモリの下位システムと対応づけることを試みた演者らの研究を紹介する。
【事象関連電位と障害児(者)研究】今塩屋隼男(兵庫教育大学)
 事象関連電位は,さまざまな事象(物理的刺激や心理的事象)に関連して惹起される脳電位の一種で,多くの種類がある。これらの電位は,ヒトの精神過程と脳活動との関係を研究するのに特に有効で,魅惑的な指標として注目されている。本フォーラムでは,種々の事象関連電位による障害児(者)の病因診断や心理・行動現象についての研究を紹介する。具体的には,(1)音刺激が,脳幹部を数ミリ秒で駆け抜ける際に惹起される聴性脳幹反応を用いた研究。特に,コミュニケーション困難者への聴力検査法や補聴器フィッティング法,および障害児(者)の脳幹機能研究,(2)人の顔に特異に増強する顔関連電位を用いた自閉症者の顔認識機能研究,(3)認知や選択的注意に深く関係しているP300を用いた注意障害や学習障害の研究,(4)動機づけや意欲などの高次な精神機能を反映している随伴陰性変動を用いた障害児の心理特性に関する研究,などについて述べる。
【睡眠中の注意(見張り番)機構と事象関連電位】堀 忠雄(広島大学総合科学部)
 覚醒中に高振幅で出現していたN100やP300などの成分は,睡眠段階1(入眠期)になると急激に振幅が低下する。一方,N300,N550,P900などの潜時が遅い成分は睡眠段階2(脳波に睡眠紡錘波が出現し,運動反応はほとんど不可能になる)になると急激に振幅が増大し,K-複合という特徴的な反応波形を形成する。このK-複合に睡眠紡錘波が随伴すると睡眠が深まる方向に変化するが,紡錘波が伴わない時は睡眠が浅くなるか,覚醒することが多い。このことから,脳は環境情報から意味のある信号を抽出し,睡眠を持続させて良いと判断した時には,睡眠紡錘波を出現させ睡眠を続行する。処理の結果,さらに詳しい情報が必要な時は睡眠を浅くし,緊急事態と判断した場合には睡眠を中断して覚醒してしまうと考えられる。睡眠中の事象関連電位の中後期成分とK-複合の振る舞いから,睡眠中の見張り番機構の精神生理学的な特性について検討する。
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